割れた食器や欠けたマグカップ。捨てるのは惜しいけれど、本格的な金継ぎは難しそう——そう思ってポーセレン150を使った金継ぎ風DIYを検討している方は多いのではないでしょうか。
ポーセレン150は、フランスの画材メーカーPebeoが販売する陶器用の水性アクリル絵具です。ゴールドカラーのアウトライナータイプが金継ぎのラインに似ていることから、SNSや個人ブログを中心に「金継ぎ風DIY」の素材として広まっています。
実際に、ANYTSUGIへのお問い合わせの中にも「ポーセレン150で直した食器、そのまま使っていいですか?」というご質問が寄せられることがあります。今回は、その質問に正直にお答えする記事を書きました。
結論:ポーセレン150による金継ぎ風DIYは、食器への使用には推奨しない

最初に私の結論をお伝えします。
日常的に使う食器への修復用途として、ポーセレン150の使用は推奨しません。
その理由は大きく3つあります。
理由① 食品安全性が担保されていない
ポーセレン150にはAPマーク(アメリカのACMI規格による安全マーク)が記載されています。このマークを見て「食品安全が保証されている」と判断しがちですが、それは正確ではありません。
APマークが示すのは、「この製品は慢性的な健康被害を引き起こす成分を含まない」という絵具としての安全性です。食品や口に触れることを前提とした安全基準ではありません。
飲み口や食品が直接触れる部分にアクリル絵具を塗布し、日常的に使い続けることのリスクは、APマークでは担保されていないのです。
理由② 剥がれ・摩耗のリスクがある
ポーセレン150はオーブンで焼き付けることで定着性は高まりますが、日常的な使用(食洗機・スポンジ洗い・食品の酸)によって少しずつ摩耗・剥がれが生じる可能性があります。目に見えないサイズの塗料が食品に混入するリスクはゼロとは言い切れません。
理由③ ペベオ公式の見解も「非推奨」
ペベオ・ジャポンの公式Q&Aでは、「口や食品の当たるところにペイントすることは極力避けることをおすすめする」という旨の回答が掲載されています。

出典:ペベオ公式サイト
つまり、メーカー自身は推奨していません…!ポーセレン150を使った金継ぎ風DIYを紹介しているブログ記事の多くは、この点を明記していないので注意しましょう。
本物の金継ぎとの違いを比較してみた
ポーセレン150による金継ぎ風DIYと、本物の金継ぎを比較してみました。
この表を整理しながら思ったことを正直に言えば、ポーセレン150の手軽さはやはり魅力的だと感じました。道具一本・数百円で金継ぎ風の見た目になるのは事実です。ただ、だからこそ正確な情報を伝えておきたい。
|
比較軸 |
ポーセレン150(金継ぎ風) |
本物の金継ぎ(本漆) |
|---|---|---|
|
素材 |
ボンド+水性アクリル絵具 |
天然漆+金粉 |
|
食品安全性 |
非推奨 |
安全 |
|
食洗機 |
非推奨〜△ |
非推奨 |
|
耐久性 |
低い(剥がれリスクあり) |
高い |
|
難易度 |
低い |
普通 |
|
コスト |
数百〜数千円 |
数千〜数万円 |
|
日常使い食器への使用 |
推奨しない |
安心して使用可能 |
① 素材(水性アクリル vs 漆)
ポーセレン150はアクリル系の絵具です。本物の金継ぎで使う天然の漆は、硬化後に非常に硬い塗膜を形成し、古くから食器の塗装・修復に使われてきた素材です。食品安全性の歴史的な実績がまったく異なります。
また、ポーセレン150は「塗る」だけです。割れた破片どうしを接着する力はありません。割れた食器を使いたい場合は、別途接着剤(タイトボンドなど食品安全に近い製品を選ぶ必要あり)を使った上で、継ぎ目にポーセレン150を塗るという工程になります。
② 食品安全性
前述の通り、ポーセレン150の食品接触安全性は不明確です。一方、本漆は硬化後に食品と接触しても問題ないとされており、長年食器の塗装に使われてきた実績があります。
③ 耐久性・寿命
アクリル塗膜は日常使用の摩耗に対して強くありません。食器として繰り返し使えば、数ヶ月〜数年で剥がれが生じる可能性があります。本物の金継ぎは適切に仕上げれば長期間使用に耐えます。
④ コスト・難易度
ポーセレン150は数百円〜と低コストで手軽に始められる一方、金継ぎキットは一万円前後と価格は高くなります。
金継ぎの難易度は、塗布するだけのポーセレン150よりは上がりますが、勘違いしてほしくないのは「金継ぎは職人じゃないとできない高度な技術ではない」ということ。初心者でも手順に沿って行えば、意外と完成させられます。
食器を直したいなら金継ぎも候補に
個人的には「ポーセレン150は安全性が不安。でも食器は直したい」という方には、ぜひ金継ぎにチャレンジしていただきたいです。仕上がりの美しさが段違いですよ。

本漆による金継ぎは、割れや欠けを漆で接着・充填し、金粉で仕上げる日本の伝統技法です。硬化後の漆は食品安全性が高く、正しく仕上げられた器は再び食器として長期間使い続けることができます。
最近は、デジタルデトックスや大人の趣味としても人気です。
ANYTSUGIでは、初心者向けの金継ぎキットを取り扱っています。食器を安心して使い続けたい方はこちらをご覧ください。
















コメントを書く
全てのコメントは、掲載前にモデレートされます
このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。