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金継ぎできないものは?器の種類別に理由と代替案をまとめて解説

金継ぎできないものは?器の種類別に理由と代替案をまとめて解説
Sho Takeshita

この記事を書いた人

Sho Takeshita 金継ぎ師

日本の東京都出身、立教大学卒業。祖母から受け継いだ茶碗が割れたことをきっかけに金継ぎの道へ。壊れたものを新しい美しさへと昇華させる哲学に感銘を受け、東京にある金継ぎ工房で技法を習得。現在は金継ぎを軸に、日本古来の美意識と現代的な感性を掛け合わせた作品を制作している。

「この器、金継ぎできますか?」という問い合わせは、よくANYTSUGIにも届きます。なかでも多いのが、ガラスのコップ。ガラスも金継ぎできますが、陶磁器のお皿よりも難易度が高く、初心者には難しいかもしれません。

金継ぎは漆という素材の特性上、どんな器でも直せるわけではありません。器の種類・使い方・割れた部位によって、できるかどうかが変わってきます。

この記事では、器の種類別に「金継ぎできるか?」「できないものはなぜできないのか?」を整理しました。

金継ぎできるかどうか早見表

器の種類

判定

補足

一般的な陶磁器(皿・茶碗・湯呑など)

通常通り修理・使用可

土鍋・釜・調理用の鍋

直火で使用不可

電子レンジ・オーブン対応食器

高温と金属スパークの危険あり

花瓶・睡蓮鉢

修理できるが、用途が限られる

ガラス製品(コップ・ワイングラスなど)

難易度が高く、用途も限られる

木製品・漆器

×

専門家への依頼が必要

接着剤で修繕済みの器

接着剤を除去すれば修理可能


金継ぎできる?できない?種類別に解説

早見表で紹介した器について、金継ぎできるのかどうか、注意すべきことなどを解説します。

一般的な陶磁器(皿・茶碗・湯呑など):金継ぎできる

金継ぎの本領が発揮される素材です。漆との相性がよく、しっかりと定着します。

修理後は食器としてそのまま使い続けられますが、手洗いが基本となります。電子レンジや食洗機は避ける必要がありますが、日常使いには問題ないですよ。

土鍋・調理用鍋:金継ぎできるが、用途が限定される

直火にかける調理器具は、金継ぎには向きません。ぐつぐつ沸騰した状態は、漆の耐熱限界を大幅に超え、漆がひび割れてしまいます。

漆の耐熱限界はおよそ95℃です。100℃を超えるような使い方をする器は、金継ぎで修理すること自体はできますが、直火にかけるような用途としては使用できません。

しかし、割れた土鍋も、金継ぎで美しく仕上げれば花器や小物入れとして使えます。金継ぎで新たないのちを吹き込み、使い続けるという選択肢もあるでしょう。

電子レンジ・オーブン対応食器:金継ぎできるが、用途が限定される

電子レンジやオーブンの加熱温度は、漆の耐熱限界を超えます。さらに、電子レンジに入れると、仕上げに使う金属粉がスパークする危険もあります。

ただし、「電子レンジにかけない」ことを前提にすれば、金継ぎ後も食器として使い続けることは可能です。手洗い・常温使用に切り替えられるなら、修理の価値は十分あります。

花瓶・睡蓮鉢:金継ぎできるが、用途が限定される

陶器の花瓶は金継ぎによる修理自体はできますが、漆は長時間水に浸すと接合部が劣化してしまう恐れがあるため、修理後の用途には気を付ける必要があります。

  • 底が割れている場合:金継ぎで修理することはできますが、花瓶として使い続けると底の接合部が常に水に浸かった状態になります。漆は短時間の水には耐えますが、長時間水に浸かり続けると接合部が劣化します。修理後はドライフラワー用・鑑賞用として使うのが現実的です。

  • 口元・持ち手が欠けている場合:水に触れる時間が短いため、花瓶としてそのまま使い続けられる可能性が高いです。

ガラス製品(コップ・ワイングラスなど):金継ぎできるが、用途が限定される

ガラス漆と呼ばれる、生漆に少量の合成樹脂を混合した素材を使うことで金継ぎすることができます。通常の金継ぎで用いる生漆はガラスとの接着力が弱く、強度を維持することが困難です。

とくに、ワイングラスのステム(細い足の部分)は断面が小さく、強度を十分に確保できない可能性があります。

ガラスの金継ぎは陶磁器の金継ぎよりも難易度が高いため、自分でやるよりも金継ぎ師に依頼するのがおすすめです。

木製品・漆器:金継ぎできない

木材は漆を吸収しすぎてシミになることがあります。また乾燥による変形も起きやすく、通常の金継ぎの手法がうまく機能しません。木製品・漆器の修理は、金継ぎ師ではなく専門の漆器修復師に依頼することをおすすめします。

接着剤で修繕済みの器:接着剤を除去すれば金継ぎできる

市販の接着剤で一度修理しようとした器は、接着剤が残っていると漆が定着しません。「試しに接着剤でくっつけてみたけど、やっぱり金継ぎしたい」という場合も、焦らなくて大丈夫です。熱湯処理や有機溶剤で接着剤を除去してから金継ぎすれば、修理可能になります。

金継ぎできない理由の大原則は「漆の2つの弱点」

なぜ金継ぎに向かない器があるのか。答えは漆という素材の性質にあります。

弱点① 熱に弱い

ANYTSUGIで実際に使って確認した感覚では、95℃程度までなら問題なく使えます。沸騰しているようなアツアツのもの以外であれば問題ありませんが、100℃を超えると漆に軽微なひびのようなものが現れ始めることがあります。

これは化学的な実証データではなく、実使用での感覚値です。「熱湯を直接注ぎ続けない」「電子レンジやオーブンには入れない」という目安として参考にしてください。

なお、電子レンジがNGなのは高温になるだけでなく、金継ぎに使われる金・銀の金属粉がスパークする危険性があるからです。

弱点② 長時間の水に弱い

漆は短時間の水には問題ありませんが、長時間水に浸かり続ける環境では漆が劣化してしまい接合部が剥がれる恐れがあります

花瓶のように水を張りっぱなしにするものや、睡蓮鉢のように常に水を溜めておくものは、金継ぎで修理しても同じ用途として使い続けるのは推奨しません。

「直せないかも」と思っても諦めないで。プロへの相談という選択肢

器の種類や状態によっては、自分で判断が難しいこともあります。そんなときは金継ぎの専門家に問い合わせてみてください。

修理後に使い方が変わったとしても、器の命は続きます。調理用だった土鍋が花器になっても、割れたガラスが飾り棚の一点物になっても、その器はまだそこに存在し続けます。「使えなくなること」と「命が終わること」は、また別の話なんですよね。

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