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金継ぎは電子レンジと食洗機がNG!レンジOKな金継ぎ風修理は安全?

金継ぎは電子レンジと食洗機がNG!レンジOKな金継ぎ風修理は安全?
Sho Takeshita

この記事を書いた人

Sho Takeshita 金継ぎ師

日本の東京都出身、立教大学卒業。祖母から受け継いだ茶碗が割れたことをきっかけに金継ぎの道へ。壊れたものを新しい美しさへと昇華させる哲学に感銘を受け、東京にある金継ぎ工房で技法を習得。現在は金継ぎを軸に、日本古来の美意識と現代的な感性を掛け合わせた作品を制作している。

金継ぎで修理した食器は、電子レンジや食洗機の使用ができません。ほかにも、直火・オーブン・紫外線など、避けるべきポイントがいくつかあります。

簡易金継ぎや、金継ぎ風の修理には「電子レンジOK」と記載されていることがありますが、そもそも食器として使用すること自体が適さないという問題が見逃されがちです。

この記事では、金継ぎした食器でできることできないことを整理するとともに、電子レンジOKといわれる簡易金継ぎについて、安全性を考察しています。

金継ぎをした食器でできないこと

本漆+金属粉を使った伝統金継ぎには、以下の使い方に注意が必要です。

電子レンジNG:金属粉がスパークする

電子レンジはマイクロ波で加熱します。金継ぎの仕上げに使われる金粉・銀粉などの金属粉は、マイクロ波に反応して火花(スパーク)を起こします。最悪の場合、電子レンジの故障や発火につながるため、絶対に使用できません。

スパーク以外にも、高温によって漆が劣化し、接合部が剥がれたり修復箇所が焦げたりするリスクもあります。

直火・オーブンNG:高熱で漆が劣化する

直火やオーブンも高温が漆を傷めます。漆は急激な熱変化に弱く、膨張・収縮を繰り返すことで接合部にひびが入ったり、剥がれが生じたりします。土鍋や耐熱皿のように直火にかける用途には使えません。

食洗機NG:熱湯・水圧・洗剤のトリプルダメージ

食洗機の洗浄は60〜70℃の高温のお湯、強い水圧、専用洗剤の3つを組み合わせます。漆はもともと水気を嫌う素材で、長時間の高温の水にさらされると膨張・収縮を繰り返して劣化してしまいます。接合部がじわじわと剥がれてくる原因になるため、漆器全般に「食洗機NG」と言われているのと同じ理由です。

長時間の紫外線NG:直射日光で変色・劣化する

漆は紫外線にも弱いです。直射日光の当たる場所に長時間置いておくと、漆が変色したり表面が脆くなったりします。日常使いでは大きな問題になりにくいですが、保管するときは直射日光を避けた場所を選びましょう。

使い方の制限まとめ

使い方

可否

主な理由

電子レンジ

NG

金属粉がスパークする・漆が高熱で劣化

直火・オーブン

NG

高熱で漆が劣化・剥離

食洗機(食洗機)

NG

熱湯・水圧・洗剤が漆を傷める

紫外線(長時間の直射日光)

NG

漆が変色・脆化

冷蔵庫での保存

低温は問題なし

常温〜熱めの飲食物

通常の食事・飲み物に使える

金継ぎした器は、およそ95℃までの熱さであれば使用に支障はありません。100℃を超えると漆が劣化しはじめますが、作り立てのお味噌汁でも100℃以下なので日常使いには問題ありません。

簡易金継ぎ(合成樹脂+真鍮粉)も電子レンジはNG

エポキシ樹脂などを使った簡易金継ぎは、2025年の食品衛生法改正以降、仕上げに真鍮粉と合成樹脂を混ぜて金色を表現することが多くなりました。伝統的な金継ぎと同様に金属を使うため、電子レンジでの使用ができないものがほとんどです。

そもそも簡易金継ぎは、食器として利用するものには推奨できません。合成樹脂部分を「食品衛生法適合」と売り出していても、真鍮粉は有害な物質が溶け出すリスクのある金属粉です。

簡易金継ぎは食器として使わず、飾りやインテリアとして形を残す目的で行うのが適切です 思い出の器を形として残したい、割れた器に新しい命を与えて飾りたいという使い方なら、簡易金継ぎは手軽で優れた選択肢になります。

オーブン金継ぎ(木工用ボンド+アクリル塗料)は電子レンジで使えるが、食器として使うにはリスクあり

木工用ボンドで割れを接着し、アクリル系のゴールドペイントで装飾し、オーブンで焼成する方法が「電子レンジOKの金継ぎ」として紹介されています。この記事ではこの手法を簡易金継ぎと区別するために「オーブン金継ぎ」と呼びます。

確かに金属粉を使わないため、電子レンジに入れてもスパークは起きません。しかし、食器として使うのには一定のリスクが伴います。

食品との直接接触の基準をクリアしていない

オーブン金継ぎによく使用される「タイトボンドIII」は米国FDA(食品医薬品局)の基準をクリアしているとされていますが、この承認はまな板など間接的な食品接触を対象とした基準です(参照:タイトボンド)。

食器のように接合部に直接スープや飲み物が触れる「直接接触」の用途は、承認の対象範囲を超えているので注意が必要です。

高温加熱による変質の懸念

タイトボンドIIIのメーカーの情報によると、約65℃から強度が低下しはじめると記載されています。150℃でのオーブン焼成は設計上の使用範囲を超えているかもしれません。

アクリル塗料が剥離するリスク

オーブン金継ぎに使用される「ポーセレン150」などの陶磁器用アクリル塗料は、適切に焼成すれば固着しますが器の表面に付着しているだけです。

スプーンやフォーク、歯が当たることで剥がれるリスクがあります。Pebeo(ポーセレン150のメーカー)自身も、食品や口が直接触れる箇所への使用は極力避けるよう推奨しています(参照:Pebeo公式サイト)。

オーブン金継ぎのまとめ

「電子レンジが使える」という点では他の記事の言う通りです。しかし、食器として継続的に使い続けることについては、上記のような複数のリスクがあります。オーブン金継ぎで修復したものは、直接食品が触れない用途(飾り物・小物入れなど)に限定するのがよいと、私は判断しています。

伝統金継ぎには、制限を超えた価値がある

電子レンジも食洗機も使えない。手洗いが必要。制限が多いのは事実です。それでも、本漆を使った伝統金継ぎには、その制限を超える価値があると私は思います。

割れた痕を隠さず、美しさに変える

金継ぎの本質は「傷を修復して元通りにする」ことではありません。割れや欠けという「歴史の痕跡」を、金や銀で表現することで、むしろ器の個性として昇華させます。修復した後の器はひとつとして同じものがありません。

「直して使う」という選択の意味

割れた器をゴミにするのではなく、手間をかけて修復して使い続ける。その行為自体が、ものを大切にする暮らしの実践です。金継ぎした器を手に取るたびに、「直してまた使っている」という感覚は日々の食事を少し特別なものにしてくれます。

食品安全性の面でも信頼できる

本漆は長い歴史の中で食器・食品容器に使われてきた素材です。適切に乾燥・硬化した本漆は食品に対して安全性が高く、金や銀の金属粉も食品への影響が少ない素材として長年使われてきました。電子レンジは使えませんが、食品安全性という観点では最も信頼できる選択肢です。

まとめ

目的・優先事項

推奨する方法

器を美しく修復して長く食卓で使いたい

伝統金継ぎ(電子レンジ・食洗機は使わない)

思い出の器を形として残したい(食器として使わない)

簡易金継ぎ
オーブン金継ぎ

金継ぎした食器の「できないこと」は、素材と方法によって変わります。どの制限を受け入れるか、何を優先するかは使う人自身が決めることです。

電子レンジが使えないことを「制限」と捉えるか、「その器との丁寧な向き合い方」と捉えるか。本漆の伝統金継ぎを選ぶなら、後者の視点がしっくりくるかもしれません。

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