金継ぎのやり方を6回に分けて解説するANYTSUGI金継ぎ講座。第4回は接着が終わった器の凹凸を埋めて、表面を平らに整える「カケの埋め」を解説します。
接着が終わっても、割れ目の周辺には凹凸や隙間が残っていることがほとんどです。深さ1mm以上のカケには「刻苧漆(こくそうるし)」を、細かい凹凸には「錆漆(さびうるし)」を使い分けます。
どちらを使うかの判断基準・各材料の作り方・塗り方・乾かない場合の対処まで、この記事で解説します。
前の工程がまだの方はぜひ1回からご覧ください。
まず確認:どちらの材料を使う?
|
カケの深さ |
使う材料 |
|---|---|
|
1mm以上(深いカケ・欠けた部分) |
刻苧漆(こくそうるし) |
|
1mm未満(細かい凹凸・隙間) |
錆漆(さびうるし) |
|
どちらかわからない |
まず刻苧漆から始めて、残った細部を錆漆で仕上げる |
ひとつの器に両方の深さの損傷があることも多いです。その場合は、先に刻苧漆で大きな部分を埋め、乾いてから錆漆で細部を整えるという順番で進めてください。
刻苧漆(こくそうるし)で深いカケを埋める
刻苧漆は麦漆に「木の粉」と「砥の粉」を混ぜ合わせて作ります。木の粉はヒノキなどの木材を粉末状にしたもの、砥の粉は石を粉末状にしたものです。
使う道具・材料:生漆・薄力小麦粉・水・木の粉・砥の粉・パレット・ゴムヘラ・竹ヘラ・ダイヤモンドヤスリ・マスキングテープ・デザインナイフ・耐水ペーパー
※漆を使用するため、作業中は必ずニトリル手袋を着用してください。
手順1:釉薬をヤスリで削る

カケの断面がツルツルしている場合は、ダイヤモンドヤスリで表面をザラつかせておきましょう。釉薬が残っていると漆が密着しにくくなるためです。削りすぎは不要で、ツルツル感がなくなる程度で十分です。
手順2:麦漆を作る

- パレットに薄力小麦粉を匙1杯分ほど出す
- スポイトで小麦粉と同量の水を加えて練る
- 小麦粉ペーストに同量の生漆を加えて練る
- 粘り気が出れば「麦漆」の完成です
麦漆の詳しい作り方は、[第3回:ワレの接着 > Step2 麦漆を作る]を参照してください。
手順3:麦漆に木の粉と砥の粉を加えて「刻苧漆」を作る

麦漆と同量の「木の粉」と「砥の粉」をそれぞれパレットに出します(体積目安=麦漆10:木の粉10:砥の粉10)。
初心者は1回で刻苧漆を丁度いい硬さにできない可能性が高いため、作った麦漆の1/3をパレットの横に残しておく(残った2/3の麦漆で刻苧漆を作る)のがおすすめです。
こうすることで、粉を加えすぎて刻苧漆がボソボソになってしまった場合に、後から麦漆を追加して調整することができます。

麦漆・木の粉・砥の粉を、ゴムヘラを使ってよく練り合わせます。

刻苧漆の完成です。ちょうどいい硬さは、ゴムヘラを押し付けてから持ち上げたとき、ヘラにギリギリくっつかずにパッと離れるくらいです。
木粉を入れすぎると、ぼろぼろと崩れるような状態になります。そんなときは取り置きした麦漆を少量ずつ加えて練り直せばOKです。
手順4:カケの周囲をマスキングテープで保護する

手順5:竹ヘラで刻苧漆を少量ずつのせる

刻苧漆を一度に盛る厚さは1〜2mm程度に抑えること。厚く盛りすぎると内側が硬化しにくく、表面だけ乾いて内部が未硬化のままになります。
刻苧漆でカケを充分に埋めることができれば、手袋を着けた手で器の形に沿うように形を軽く整えます。刻苧漆はあとからヤスリやナイフで形を整えるため、ここでの整形はおおまかで問題ありません。
なお、大きなカケは1回で修復しきれないので、漆風呂で1日硬化させたのちまた刻苧漆をのせる作業を繰り返し行います。
手順6:漆風呂で約1日硬化させる

カケが深くて1〜2mmで埋まりきらない場合は、「刻苧漆を1~2mm盛る」→「漆風呂で1日硬化させる」を繰り返して少しずつ高さを出していきましょう。
ワンポイントアドバイス:乾いているかの確認方法
|
状態 |
確認方法 |
|---|---|
|
乾いている |
棒や爪楊枝で押しても凹まない。引っかくと白い線が残る(カリカリした感触) |
|
乾いていない |
押すと凹む。引っかいても跡が残らない(ボヨボヨした感触) |
※直接素手で触れると漆かぶれの原因になります。必ず手袋をつけるか、棒を使って確認してください。
1〜2週間経っても乾かない場合は、以下のどちらかで対処できます。これは初めて金継ぎに挑戦するお客様からよく寄せられる相談のひとつで、焦って次の工程に進んでしまうと後の剥がれに直結します。
①穴を空ける:アイスピックや錐で刻苧漆にまんべんなく穴を空ける。空気に触れることで3〜4日で硬化します。穴は後から錆漆で埋めればOK
②やり直す:刃物で刻苧漆を除去して詰め直す。時間はかかりますが、確実な方法です
乾かない主な原因は、厚盛りしすぎた・木粉が少なすぎた、のいずれかです。
手順7:硬化後にデザインナイフと耐水ペーパーで刻苧漆を平らに整える

硬化後に刻苧漆の形を整えます。まずは刻苧漆から保護するために張ったマスキングテープを剥がしましょう。

次に、はみ出た刻苧漆をデザインナイフで削り形を整えます。

耐水ペーパーを2cm角ほどに切って三つ折りにします。水を付けて、刻苧漆の表面が平らになるまで磨きましょう。磨いて出た汚れはティッシュペーパーで拭き取ります。
柄やプリントのある器を磨くときは、耐水ペーパーが器の表面に当たって絵柄が消えてしまわないように気をつけてください。
これで大きなカケの埋めは完了です。次に「錆漆」を使って、刻苧漆で埋めきれなかった細かい表面の凹凸を整えます。
錆漆(さびうるし)で細かい凹凸を整える
大きなカケが埋まったら、今度は1mm未満の細かい凹凸・隙間を錆漆(さびうるし)で整えます。刻苧漆を使わなかった場合でも、接着後に残る細かい段差はこの工程で処理できます。
使う道具・材料:生漆・水・砥の粉・パレット・ゴムヘラ・竹ヘラ・マスキングテープ
手順1:錆漆を作る

パレットに砥の粉を匙2杯ほど出しゴムヘラで細かく潰しましょう。砥の粉は固まりやすく、小石の粒のようなものが残っていることがあります。

砥の粉がきれいな粉状になったら、スポイトで水を1滴ずつ加えながら練り混ぜていきます。

砥の粉がマスタードくらいの硬さになればOKです(日本だと練りからしくらいの硬さのほうが分かりやすいかもしれません)。

水を混ぜ合わせた砥の粉に対して、半分くらいの量の「生漆」をパレットに出し、ヘラで混ぜ合わせます(体積比=砥の粉 10:生漆 5)。

マヨネーズくらいの硬さになれば「錆漆」の完成です。

※ 錆漆は乾燥しやすいためパレット上では小さくまとめ、ヘラで蓋をするようにして空気に触れにくくしながら作業しましょう。
手順2:錆漆を修復箇所に薄く塗り込む

竹ヘラを使い、錆漆をワレの接合部や刻苧漆の上に薄く塗りこみます。
※ 表面がざらざらした陶器は錆漆の汚れがついてしまうため、周囲をマスキングテープで保護しましょう。

厚手の手袋を着用した指を使い、錆漆を押し込むように表面をならします。
竹ヘラだけでは細かい隙間に錆漆が行き届きにくいため、指でしっかり刷り込むのがポイントです。
手順3:漆風呂で1日くらい硬化させる

錆漆を塗ったあとは1日ほど漆風呂に入れ、漆を硬化させます。
錆漆を厚く塗りすぎたり、生漆の割合が多すぎた場合、錆漆がいつまでも乾かず「膿み(うみ)」が出ることがあります。
そのときは、乾いていない錆漆を竹ヘラで除去し薄く塗り直して対処します。すでに硬化した部分はそのままでOKです。
凹凸が整ったら第5回の中塗りへ進む
ひとつひとつ丁寧に手をかけた分だけ、器は確実に元の姿に近づいています。この工程が終わったら、いよいよ表面を整える中塗りへ進みます。
→ [第5回:中塗り] へ進む















コメントを書く
このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。