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金継ぎは食品安全?安全なキットを選ぶためのポイントを解説します

金継ぎは食品安全?安全なキットを選ぶためのポイントを解説します
Sho Takeshita

この記事を書いた人

Sho Takeshita 金継ぎ師

日本の東京都出身、立教大学卒業。祖母から受け継いだ茶碗が割れたことをきっかけに金継ぎの道へ。壊れたものを新しい美しさへと昇華させる哲学に感銘を受け、東京にある金継ぎ工房で技法を習得。現在は金継ぎを軸に、日本古来の美意識と現代的な感性を掛け合わせた作品を制作している。

金継ぎで修理した器が食器として安全に使えるかどうかは、どんな材料を使って金継ぎしたかによります。漆を使う本漆金継ぎなのか、エポキシ接着剤を使う簡易金継ぎなのか、金色のラインを何の素材を使って描くのかなどで安全性は変わってきます。

結論:安全なのは「本漆」と「金粉」で修復したもの

本漆(天然漆)と金粉を使った伝統的な金継ぎは、昔から日本で行われていた修復方法であり食品安全性が保たれています。同様に、銀粉やプラチナ粉で仕上げた場合も食器として安心して利用できます

金粉の代わりとして安価な「真鍮粉」を用いることもありますが、真鍮粉は基本的に食品安全性の試験が行われていないため、食器としての使用は推奨されません。

同じ理由で、エポキシ樹脂と真鍮粉を使った簡易金継ぎキットは食器への使用はお勧めしません。

なぜ本漆を使った伝統的な金継ぎは食品安全なのか

本漆は「伝統的な方法だから大丈夫」そういわれても、なぜ安全なのかを具体的に話しているサイトは少ないでしょう。ここでは、歴史と化学の側面から伝統的な金継ぎが食品安全性が高いのかを解説します。

食器として使われてきた数千年の歴史

漆は日本で何千年もの間、食器のコーティングとして使われてきました。

福井県の鳥浜貝塚からは、約5,000年前の漆塗り木椀が出土しています。日常使いか祭祀用かについては考古学者の間でも議論がありますが、古くから食品に接する器に漆が塗られていたことを示しています。石川県の輪島塗、福島県の会津塗をはじめ、日本の漆器文化は碗・皿・盆・箸など、食べ物と日常的に接する道具を中心に発展してきました。

この長い実績は、硬化した漆が食品と接触しても害を与えないことの実践的な証拠だといえます。

漆が硬化するとなぜ無害になるのか

漆の木(Toxicodendron vernicifluum)の樹液にはウルシオールという成分が含まれており、これはツタウルシのかぶれと同じ原因物質です。私自身、誤って触れてしまい1週間ほど痒みがおさまらなかった経験があるので、作業中は手袋を着用しましょう。

ただし、漆が硬化すると化学的に全く別の物質に変わります。

漆が固まるプロセスは、一般的なペンキのように「水分が蒸発して乾く」のとは全く異なります。漆の中には「ラッカーゼ」という酵素が含まれており、これが湿気を利用して、バラバラだった成分同士を強力な鎖でつなぎ合わせる役割を果たします。

この酵素の働きによって、漆は分子レベルで非常に密度の高い、網目のような構造へと変化するのです。一度こうして固まってしまうと、天然の物質とは思えないほどタフな素材になります

金継ぎの最終工程を終えてから食器として使い始めるには、約1か月寝かせてからが推奨されるため時間はかかりますが、食品安全性が高い素材です。

ただし、漆アレルギーを持つ人は硬化後の器でも反応が出る可能性があります。頻度は高くはありませんが、体質によっては注意が必要です。

純金と純銀は食卓に適した金属

伝統的な金継ぎの仕上げには純金粉または純銀粉がよく使われます。どちらも化学的に安定しており、通常の使用条件では酸化せず食品と反応しません。純金は特に不活性で、食用金箔のような食品グレードの用途にも使われる素材です。

食品安全性をチェックするうえで注意すべき材料

合成うるし・カシュー漆

「うるし」という言葉には法的な定義がなく、メーカーは天然漆の樹液を含まない製品にも自由にこの言葉を使えます。「新うるし」「合成うるし」「カシュー漆」などと呼ばれる製品は、合成または半合成の化合物であり、本漆とは別のものです。

これらの合成品は家具や装飾品など食品に触れない用途では問題ありませんが、食べ物や飲み物に使う器には適していません。日本では2025年の食品衛生法の改正により、食器にこれらの素材を使うことはできなくなりました

エポキシ+金色の粉

簡易金継ぎキットでよく使われるエポキシ接着剤と、金色の粉についても注意が必要です。接着後に黄金の線を描くときに、多くの簡易金継ぎキットはエポキシ接着剤を金色の粉(金粉ではない)を混ぜ合わせて継ぎ目に塗ります。

この「エポキシに金色の粉を混ぜる」という手法にはとある問題があります。仮にエポキシ自体に食品安全性認証があったとしてもエポキシに別の粉末を加えた時点で、無効になってしまいます

エポキシブランドであるArtResinもブログ内で「着色剤など外部の製品を加えると食品安全性が変わる」と明示しているのです。また、簡易金継ぎキットによく用いられる金属顔料やマイカパウダーも食品接触に承認された添加剤ではありません。

真鍮粉・銅粉

金や銀の代替としてより安価な真鍮・銅の粉末が使われることがあります。これらは合金や反応性の高い金属で、金属イオンが食べ物や飲み物に溶け出す可能性があります。

通常の条件下で化学的に安定している金や銀とは異なり、真鍮(銅+亜鉛)や銅は腐食しやすく、特にトマトソースやシトラスジュースなどの酸性食品と反応しやすいです。

花瓶や置き物などの装飾品には問題なく使えますが、食品安全性を意識するのであれば、食べ物を盛る器には金粉または銀粉を選ぶのがベストです。

本当に食品安全な金継ぎキットの選び方

食品安全を重視する場合、購入前に以下の点を確認してください。

①漆が使われているかを確認する

 「本漆」または「自然由来の天然漆」と明記されているか確認します。「カシュー漆」や「新うるし」、または原料が不明な「urushi」の表示だけでは判断できません。

②金属粉の種類が「金粉」か「銀粉」かを確認する

食品安全を保つためには、仕上げに金粉・銀粉・プラチナ粉を使っている必要があります。真鍮・銅・マイカ顔料などは食器には適していません。

③成分の透明性を確認する

信頼できるキットは内容物を具体的に記載しています。「伝統的な材料を使用」という曖昧な表現だけでは、判断の根拠になりません。

ANYTSUGIの金継ぎキットには、漆の木から採取した天然漆(本漆)と、仕上げ用の金粉(含有率97.5%)および、銀粉が含まれています。エポキシも合成うるしも、代替金属粉も使用していません。修理が完成し漆が完全に硬化した後、器がもとの用途である「食卓で使われること」に戻れるよう、すべての材料を厳選して選んでいます。気になった人はチェックしてみてください。

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