金継ぎ依頼の修理相場は5,000円~20,000円前後です。小さな欠けやひびなら数千円で済みますが、大きな割れやなら1万円を超えるケースも。
本記事では初心者でも理解しやすいように、金継ぎ依頼の料金目安や費用が変わるポイントを分かりやすく解説します。
金継ぎ依頼の相場はいくら?

金継ぎで陶磁器を修理してもらう場合の相場は、安ければ5,000円程度~高ければ20,000円前後とかなりバラツキがあります。
小さな欠けであれば比較的安価に収まりますが、破片が複数に分かれる大きな割れや複雑に走ったヒビは、工程や消費する材料が増えることで費用も高くなります。
- 欠け:5,000~15,000円程度
- ヒビ:5,000~10,000円程度
- 割れ:6,000~20,000円程度
以下はいくつかの店舗の、金継ぎ修理料金です。簡単にまとめたので参考程度にご覧ください。
| 修理業者 | 修理料金(金消粉仕上げ) |
| つぐつぐ |
欠け:3,300円~ |
| 金継ぎ暮らし | 欠け:20,000円~ ひび:20,000円~ 割れ:24,000円~ |
| にっぽんてならい堂 | 割れ(3片まで):7,700円+仕上げ1cmあたり770円 欠け(5か所まで):7,150円+仕上げ1cmあたり770円 |
状態や仕上げの方法などによって料金は変わります。具体的にどのように料金が変わるかについては、次の章から詳しく解説しましょう。
修理料金の内訳と価格が変動するポイント

金継ぎの修理費用は、以下の三つの合計で構成されていることが多いといえます。
- 素材や破損状態による料金
- 仕上げの種類による料金
- 特殊な仕上げによる追加料金
なお、サイトの料金表では一見安く見えても追加で費用がかかる場合もあります。実際の金額を知るには、写真を送ったり器を持ち込んだりして見積りを取るのが確実です。
破損状態による料金
多くの業者は3,000円程度の最低料金が設定されており、そこに割れの分割数や欠けの面積に応じて料金が上乗せされていきます。
| 破損状態 | 価格変動 | 料金目安 |
| 欠け | 欠けの数と、欠けの合計面積に応じて価格が上がる | 約3,000円~ |
| ひび | ひびの長さに応じて価格が上がる | 約3,000円~ |
| 割れ | 割れの分割数と、割れの長さに応じて価格が上がる | 約6,000円~ |
しかし、破損状態だけで料金は決まりません。破損の長さや面積と、次に解説する「仕上げの材料」によっておよその料金が確定します。
仕上げの材料による料金
一般的に金継ぎ修理といえば「金消紛」を使ってつなぎ目を仕上げるケースがほとんどですが、金消粉以外の仕上げ方法を選択できる業者も多数あります。
| 仕上げ | 特徴 | 1cmあたりの目安料金 |
| 色漆 | 主に黒か赤のシンプルな仕上げ | 無料~100円 |
| 錫 | 柔らかい銀白色で落ち着いた輝き | 100~300円 |
| 真鍮 | 金よりも黄色っぽい温かみのある仕上げ | 200~400円 |
| 銀消粉 | 落ち着いた銀色艶消し仕上げ | 400~600円 |
| プラチナ | 白銀色で上品かつ希少な輝き | 500~700円 |
| 金消粉 | 最も一般的な金の艶消し仕上げ | 600~1,000円 |
| 銀丸粉 | 光沢感が美しく高級感のある銀仕上げ | 700~1,000円 |
| 金丸粉 | 光沢感が美しく高級感のある金仕上げ | 900~1,500円 |
※1cmあたりの目安料金は、素材の時価や各業者の修理価格を考慮して独自に作成した参考値です。必ずしも上記価格になるとは限りません。
特殊な仕上げによる追加料金
欠損した部分にデザインを施す「デザイン仕上げ」や、欠けた素材を別の陶磁器から流用する「呼び継ぎ」といった特殊な仕上げ方法だと、追加料金が発生するのが一般的です。
また、釉薬(陶磁器の表面のガラス質)の種類や、依頼物の形状が特殊なものは別途追加料金が発生する可能性があります。
おすすめの金継ぎ修理業者
金継ぎの修理は依頼品を直接見て料金を見積もってもらう必要があります。お住まいのエリア内で修理できる教室やお店があるのがベストですが、そういったケースは多くないでしょう。
ここでは、全国どこからでも郵送で金継ぎ修理を依頼できる業者をいくつか紹介します。
鹿田喜造漆店

【料金目安】
- 欠け:0.3cm角以内 3,000円~
- ひび:2cm以下 4,000円~
- 割れ:7,800円~
慶応3年創業以来、漆の精製・販売を行ってきた京都の漆店「鹿田喜造漆店」では、Webフォームから金継ぎ修理の見積もり依頼が可能です。
つぐつぐ

【料金目安】
- 欠け:0.5cm未満 3,300円~
- ひび:6cm未満 3,300円~
- 割れ:2分割18cm 20,900円
「つぐつぐ」は東京にある金継ぎ教室で、郵送での修理依頼にも対応しています。事前に器の写真を送ることで、およその費用感を知ることが可能です。
TABITOTE

【料金目安】
- 欠け:6,600円~
- ひび:7,260円~
- 割れ:9,130円~
旅と手仕事にフォーカスしたWebマガジン「TABITOTE」では、金継ぎの依頼も承っています。LINEで写真を送ることで概算の見積もりを知ることが可能です。
金継ぎを依頼する場合の注意点
金継ぎを依頼する場合、いくつか注意すべきことがあります。
漆を使った伝統金継ぎなのかを事前に確認する
現代には「簡易金継ぎ」という手法も存在します。伝統的な金継ぎでは漆を使って接着するところを、合成樹脂(接着剤やレジン等)を使用して接着する手法です。
漆と違い食品衛生上の安全を完全保証できない手法なので、修理後に食器として実用する場合は「伝統金継ぎ」を選ぶことをおすすめします。
修理後は観賞用にするのであれば、簡易金継ぎでも問題ないでしょう。簡易金継ぎであれば、キットを使って自分で簡単に修理することもできます。
依頼から完成まで数か月待つ必要がある
伝統金継ぎは依頼から完成までに1~3か月かかるのが一般的です。温度と湿度によりますが漆は完全硬化するのに約1か月かかります。そのため、完成までは最短でも1か月は見ておきましょう。
なお、硬化に時間がかかるのは漆本来の性質であり、技術の差ではありません。完成までの期間が極端に短い修理業者は漆に化学薬品を混ぜていたり、合成樹脂で接着しているといってよいでしょう。
電子レンジや直火で使用できない
金継ぎした器は電子レンジで使うと、仕上げ材に使用した金属粉が反応して火花を散らし、最悪の場合火災の原因になる恐れがあります。
また、直火での使用も耐久性が損なわれてしまうため避けるべきです。
修理依頼か買い替えかの判断基準
金継ぎによる修理は1万円以上の費用がかかる場合も少なくありません。高価ではないものを頼む場合は、新しいお皿を買うほうが安いこともあるでしょう。
しかし、金継ぎは単なる修理ではなく、時に値段以上の価値を生み出します。割れや欠けを美しく仕上げることで、器を唯一無二の工芸品へ生まれ変わらせることができます。
思い入れのある器ならなおさらです。家族や友人から譲り受けたもの、旅先で運命的な出会いをしたものなど、思い出が込められたものは買い替えることでは決して補えない価値を持っています。
金継ぎは、そうした「記憶」を未来へつなぐ手段でもあるのです。
自分で修理するという選択肢もある
金継ぎには修理してもらうという選択肢のほかにも、自分で修理するという選択肢もあります。
金継ぎキットを購入して自分で修理
最近ではコロナ禍における金継ぎブームの影響もあり、初心者向けの「金継ぎキット」が市販されています。
キットには必要な道具や材料が一式そろっており、金継ぎの手順書も同梱されているため、自宅でも伝統的な金継ぎを体験しながらの修理が可能です。
伝統金継ぎのキットは1万円以上(簡易金継ぎなら5,000円程度)しますが、自らの手で直した器は特別なものになること間違いありません。
教室に通って自分で修理
自分で最後までうまくできるか不安な人は、金継ぎの教室に通うという選択肢もあります。
地域の工芸教室や金継ぎ師が教室を開催していれば、専門家に指導を受けながら本格的な伝統金継ぎを学ぶこともできますよ。
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